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時を計る

更新日:2022年9月1日

はじめに

地球が太陽の周りを回り一定の速度で自転することによって、地上にいる私達には太陽が昇り沈むを繰り返して日々が過ぎ時間が経過していく感覚があります。地球上の生物は進化の過程で太陽のエネルギーを使うようになり、それによって世代をつなぎ、形態を変化させてきました。昼と夜、朝と夕、早朝、真昼、夕暮れなど、太陽の動きと密接に関連した「時」の感覚を持って集団生活してきた人類は、社会活動をするようになって時間を計る必要性がでてきたと考えられます。時を計るという行動は、日時計や水時計、砂時計の発明によって始まったと思われますが、その時期は紀元前5000年頃と言われています。ここでは時間を計るものについて紹介します。


時を計る最初の装置-日時計、水時計、砂時計

紙を円形に切り、その中心から外側方向に直角三角形状の紙を立てて貼った日時計を作ったことがあると思います。この簡単な構造の時計は、その時その場所の時間を知り共有するという点では申し分ないものです。棒を地面に垂直に立てるものや地軸に平行に立てるもの、壁に取り付けるもの、文字盤が水平なものや半球形のもの、携帯型のもの、太陽光を小さな穴を通して光の当たる位置から時刻を知るものなど、様々な種類があります。季節や緯度によって変化する影の位置を考慮した正確な日時計も発明されており、誤差数十秒の日時計もあります。日時計の種類を図1に纏めてみました。北半球では、文字盤へ投影される影の先がいわゆる「時計回り」に動きます。そのため、北半球で開発が進んだ機械式の時計の針は時計回りに動くようになっています。

水時計や砂時計は太陽光を必要としないことから、夜でも時間の流れを知ることができます。一般的な水時計は、穴の開いたお椀の内側に水平に線をいれて一定量の水の流れ込みで時を刻むもの、逆に孔から水を落とし水面の位置から時を刻むものなどがあります。砂時計は、ガラス容器に封入した砂粒の大きさと量、容器の絞り部分の孔の大きさによって、すべての砂が落下する時間がほぼ一定なことを利用したものです。これは時計というよりも、タイマーの役割として現在でも普通に用いられています。水時計はほとんど見かけることはありませんが、似た原理を用いて装飾用として販売されているものもあります。


機械式時計

自然の動きを活用して時間を計測する方法から、1300年頃に錘を動力源とした時計が考案され、次いでぜんまいを動力源として時間の計測に用いることや、1600年代に振り子の活用が考案されて時計は飛躍的に進展することになります。時計の発展には工芸的側面と、人々にとって正確に時を測る重要性が出てきた時代背景があったと思われます。脱進機と調速機と呼ばれる機構の発展とゼンマイとの組み合わせによって時計の小型化が可能になり、その仕組みは現在に至るまで機械式腕時計に用いられています。17世紀にはブレゲらによって時計づくりの技術は飛躍的に向上し、集団的手作業による時計作りで機械式時計は生産され、19世紀初頭までより正確でより大量に生産できる方法の模索が続きます。正確で安価な腕時計が出回るようになったのは、20世紀後半に水晶発振器を使った時計の仕組みが作られてからとなります。機械式振り子時計のコアの部分である脱進機の原理を図2に示します。

ガンギ車の歯車にはいくつかの歯車を通して錘やゼンマイからの力がかかります。それによりガンギ車は回転しますが、その回転は振り子の動きで制御され、回転→停止→回転→停止を繰り返します。時計が一定の速度で動くこの基本的な仕組みは振り子の代わりにテンプと呼ばれる環状の金属とヒゲゼンマイの組み合わせによる調速機の誕生によって、小型化が可能になり精巧な機械式腕時計が作れるようになりました。


水晶発振式時計

水晶が固有の周波数を出すことが分かってから、1960年代にそれを利用したクオーツ時計が開発されました。水晶振動子を電池で発振させ、その信号でステップモーターを駆動する方法で、ステップモーターは調速機となり、機械式時計の仕組みに組み込まれました。また、発振をデジタル信号に変え電気的に処理して液晶表示できる時計も開発されました。機械式の誤差が一日あたり数十秒だったのに対し、水晶発振を用いる方法ではひと月あたりの誤差が30秒程度、また、電波時計の開発によりズレを自動的に補正して常に正確な時を計ることができるようになりました。デジタル表示の時計が販売される一方、視覚的に時間を捉えることができるアナログ式は時間に関する多くの情報を提供してくれますので、これからも私達の回りにあり続けると思われます。


おわりに

時間を計る道具は社会生活を滞りなく行うために必要ですが、時間は捉えようのないものです。分子や原子を含めて物体が動くということは時間と切り離すことができません。動きが時間を生むことになっているようにも思えます。相対性理論での時間は、高速で動く物体の内部では相対的に時間が遅くなるとされていますが、知識として持っているだけで本当に理解できているのか怪しいです。時間を止めたい、過去に戻りたいと思ったことがありますが、残念ながら過去に戻れないし、未来が急速に近づいてくることがない以上、今が大切なのだろうと思います。




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