top of page
shiga67

速度の測定法(1)-風速、流速

更新日:2月14日

はじめに

量子から銀河まで、私たちが観測して捉えることができる物質は時間の経過とともに動いています。直線的に一定の速度で動くものや、回転するもの、周期的に動きが変化するもの、不規則に動きが変化するものなど。そのため、様々な理由で物質の動きの方向や速さを測る必要がでてきます。不規則な動きに見えるものの、ある条件においては一定の方向と速度を持って動くもので、私たちにとって重要なものは空気です。空気は窒素や酸素などの気体の混合物で地表の大気圧の元では密度が1.3 kg/m^3、水の0.13%ですが、空気の移動速度が大きくなると家屋などを破壊するほどの力を持っています。空気の移動速度の一つである風速は気象予報などで使用され、台風の強さを示す指標として私たちが最も関心を持つ数値です。今回は、空気などの流体の速度を測る方法を装置別にご紹介します。


空気の流れの速度(風速)を測る

吹き流し

風向きと風速を目視で判断できるきわめて単純な仕組みのものですが、赤白や青白などの色パターンで遠くからでもよく見えるので、離れたところから状況を判断する必要がある空港や高速道路、海水浴場などで使用されています(図1)。吹き流しの口の向きで風向きを、吹き流しを括り付けているポールと吹き流しの角度で風速を測ります。2 m以下/秒で0度、3~4 m/秒で30度、5 m/秒で45度、10 m/秒で角度90度が目安です。


図1 吹き流しの対ポール角度と風速


風杯式、ベーン式

風は空気の流れによって発生します。感知できない程の空気の流れから建造物を破壊してしまうほどの流れまで様々です。一般的に風速を測るには風速計と呼ばれる装置が用いられます。気象観測用の風速計でよく目にするのは、お椀型の器具を二つないし三つ取り付けた風杯式で、どの方向からの風もうまくとらえることができます(図2a)。風向き計とともに用いられます。プロペラの付いた風速風向計もあります(図2b)。風車式は風によって引き起こされる風車の回転数で測定する装置(ベーン/風車)です(図2c)。プロペラや風車の回転数によって風速を決める方式なので、比較的容易にデジタル表記することができ、様々な種類の風速計が用いられています。目的によって風車の大きさも異なり、計測可能な風速は0.2 mから30 m程度です。それ以下、それ以上では精度が不十分となり、別の風速計が使用されます。


超音波式

超音波送信機と超音波受信機からなり、超音波送信機側に空気が流れると超音波の伝播速度が遅くなり、超音波受信機方向に空気が流れると超音波の伝播速度が速くなることを利用し、風速と風向きを三次元で測定することができます(図3)。装置によりますが、0.01 m/sの分解能で最大75 m/s程度の風速を計測することができます。可動部分がないため強い風でも壊れにくい特徴があります。


図3 超音波風速計原理


MEMS式

微風と呼ばれるわずかな風の動きと風向きをとらえるためにMEMS(micro electro mechanical system:微小電気機械システム)を使った装置があります。小型化できるため室内空調の気流管理などに用いられています。MEMSには温度センサーが入っており風によって生じる温度ムラから風量と風向きを知ることができます。温度によって流れる電流の抵抗値が変化するセンサーが用いられており、風速が速いとセンサーの温度が低くなることで電気抵抗値が低くなり、その抵抗値の低下量から風速を求めることができます。


ピトー管式

風速ではありませんが、音速に近い速度で航行する航空機の速度はピトー管式で測定します。構造は単純で管の先端の孔にかかる圧力と管の側面にかかる圧力の差を測定することで速度を求めます。金属管で構成されるピトー管は、構造的にシンプルかつ堅牢で高い風圧や高熱が発生する場所での測定に向いています。


液体の流速測定

液体の流速測定には、風速測定の装置と同様の原理で、管の先端に風車がついた構造の装置を用います。風車を通過する流れによって生じる風車の回転数で単位時間の流速を求めます。河川水の流量測定では河川のある地点の断面積から測定点を決め、その断面におけるいくつかの区間の測定点の流速とその区間断面積の積を足して算出します。その他の方法としては、超音波を用いる方法や、浮子と呼ばれる浮きのようなものを用い、特定の区間を通過する時間から推定する方法もあります。また、管内の流体の流速は、管の外側に取り付けた装置によって測定する方法があります。超音波を用いており、異なる管の材質や流体でも超音波が通るものであれば測定可能です。管の外側に取り付ける装置のため、設置が容易で液体に直接触れることなく測定できることが最大のメリットです。


おわりに

今回は風速の測定法についてまとめてみましたが、そのほかにもどうやって速度を測るのかがあまり知られていないものがあります。これから折々に速度の測定方法についてご紹介してまいります。



閲覧数:83回

最新記事

すべて表示

阻害活性分析 カタログ

試験概略・阻害活性分析によって分かること 各阻害活性分析について

Comments


bottom of page