はじめに
熊本県は、環境省の「昭和の名水百選」と「平成の名水百選」を合わせて8箇所が認定され、その数は富山県と並び全国トップとなっています。「昭和の名水百選」では、菊池水源、轟水源、池山水源、白川水源の4箇所が認定されました。4箇所のヘキサダイアグラムを用いた水質の特徴について紹介します。
水質の特徴分類
まず、地下水等の水質の特徴を把握する手法をご説明します。最もよく用いられているのは、ヘキサダイアグラムで表す方法です。ヘキサダイアグラムとは、水に溶け込んでいる各種イオンのイオン濃度(meq/L)を水平軸にプロットし、各点を結んでできた六角形の形状から、水質を分類、把握するもので、一般的に、同水脈におけるヘキサダイアグラムは、同様の形状を示すと考えられます。ヘキサダイアグラムは右側または左側にマイナスイオン種を、反対側にプラスイオン種を置いて、その濃度を中央縦軸からの距離で示します(中央縦軸に近いほど濃度が低く、遠いほど濃度が高い)。一番上の右側には塩化物イオン、中央には炭酸水素イオン、一番下には硫酸イオンを置くのが一般的です。また、硝酸イオンは硫酸イオンに加えて表示するか、硫酸イオンと硝酸イオンの量が分かるように、黒塗りの三角形で示している場合もあります(下図)。
幾つかのパターンを示します。
A) 海水浸透の影響
海水由来のナトリウム、塩化物イオンが多く含まれる。
B) 地表浸透水の影響
地表水由来のナトリウム、炭酸水素イオンが多く含まれる。
C) 海水浸透と地表浸透水の影響
ナトリウム、塩化物イオン、炭酸水素イオンが多く含まれる。
D) 坪井川流域
炭酸水素イオンが多く含まれる。塩化物イオン、硫酸イオンは少ない。
E) 阿蘇伏流水
全体的に低濃度だが、火山性地質に由来する硫酸イオンがみられる。
F) その他
全体的に低濃度で、硫酸イオンも少ない。
菊池水源、轟水源、池山水源、白川水源の4箇所の水質解析の結果をヘキサダイアグラム図で示します(下図)。白川水源は「阿蘇伏流水」に、菊地水源、轟水源、池山水源は「その他」に分類されました。阿蘇伏流水とは、全体的に低濃度ですが火山性地質に由来する硫酸イオンがみられる水質、その他とは、全体的に低濃度で硫酸イオンも少ない水質です。
・阿蘇伏流水(青色グラフ)、その他(紫色グラフ)
このヘキサダイアグラムからでは、どの水がおいしいかを判断することは難しいことですが、おいしい水の基準(目安)の一つとして水の硬度があります。水の硬度は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの量によって決まります。硬度が60 mg/l 未満を「軟水」、60 mg/l以上~120 mg/l未満を「中程度の軟水」、120 mg/l以上~180 mg/l未満を「硬水」、180 mg/l以上を「非常な硬水」といいます(WHO基準)。水の特徴としては、「軟水」では水に溶けている成分が少ないため、まろやかな(くせのない・味気ない)性質を示します。一方、「硬水」では溶けている成分が多いため、その成分の特徴を示す(くせのある)味覚を示すことになります。硬度の基準からでは、菊地水源、轟水源、池山水源が「軟水」に分類され、白川水源は「中程度の軟水」に分類されます。水のおいしさは、成分に加え、水の温度や気温、その時の体調など、様々な要因で変わります。
おわりに
熊本は地下水に恵まれ湧き水も多く、地域の生活にも利用されています。湧き水の数は九州では熊本県が最も多く、次は大分県、鹿児島県と続きます。また、以外にも東京都も多くの湧き水があります。各地域の湧き水をまとめたサイトがありますのでご覧ください。
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